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きっかけは映画館
第21章 気がつけば…
「きゃあ…やっぱり〜、でも、もう、お友達じゃないじゃないですかぁ。」
「何で?」
「お友達とは…シないでしょ?先輩…」
「えっ…えっ…してないわよ。」
「え〜、泊まったのに?」
「ヒジ…カタさんとは、自宅の駅が一緒で…
私が不安定だからって、昨日と一昨日、着替えを持って…ヒジ…カタさんの家に、泊まっただけ…」
「そうですか…」
優希ちゃんはあんなにマシンガントークだったのに、ポツリと言って、
何故か、チーンと合掌のポーズ。
そして、
「じゃあ、私は土方さんを応援しよう。麻里絵先輩、ちゃんと『お付き合い』するようになったら、教えてくださいね…
晃とお祝いしますから…」
と、あっさり引いていった。
なのに、私が…聞いてしまった。
「あの〜、その、泊まって…シないってのは…普通じゃないの?」
「泊まってって、土方さんが別の部屋なんですよね?」
「………いや、一緒のベッドで、抱き締めて…もらうだけ…」
優希ちゃんが、また、合掌した。
「熟年夫婦か倦怠期でもないのに…可哀想、土方さん…かなり我慢してますよね…」
………
「麻里絵先輩だって、付き合ったことあるんだから…わかるでしょ?」
「えっ…?」
「一緒にいたら、毎日…」
「えっ…?、毎日って…
私、ひと月に一回が多いくらいかと…」
「麻里絵先輩の元彼がお釈迦様なのか…、先輩が気付かなかっただけで…
倦怠期だったんじゃないですか?」
「優希ちゃんは…毎日?」
「そ…そりゃ、どっちかが疲れてて…途中で…寝ちゃうってこともあるけど…
基本、毎日…
って、先輩何言わせるんですか〜」
と真っ赤になる優希ちゃん。優秀だけど、普通に可愛い女の子なのだ。
「でも…土方さんて…見るからに…精力強そ。」
「ヒジ……カタさんが?」
優希ちゃんが三度目の合掌をして…
「ちなみに、麻里絵先輩、土方さんのこと何て呼んでるんですか?
毎回毎回、ヒジ…カタ…って、商談の時からでしたよ?」
「ヒジオ…」
「はぁあ…ちゃんと名前で呼んであげたらいいじゃないですか…」
優希ちゃんは合掌しながら言い、『時間ですよっ』と先輩のように締めくくり、社に戻った。