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きっかけは映画館
第21章 気がつけば…
はぁ…はぁ…はぁ…
「麻里絵ちゃん?」
私の早歩きなんてヒジオには大したことじゃなく、息も乱れずヒジオが私を覗き込む。
「麻里絵ちゃん…さっき、何て?」
「いいから、早く帰るわよ。駅前のスーパー閉まっちゃうから…」
「だから?」
「今日はヒジオの家で宅飲み…私のお酒がないから、スーパー寄るのよ。」
「そうじゃなくて…さっき…」
「うるさい。」
私も自分でも、自分の言動が理解できなくて…
ヒジオの胸に顔を埋めて……逃げた。
何だったんだろう…
美人さんに絡まれるヒジオを見て…
やっぱり、女慣れしてるなって、ムシャクシャして…
待ち合わせの店から見えないところで立ち止まるヒジオがズルいと思ったら…
店を走り出してた。
二人の会話が聞こえてきたら、カァアっと頭に血がのぼって…
その後は…よく、覚えていない。
ヒジオが奪われないように、走って逃げてきた。
電車は結構混雑してるから、そのままヒジオの胸に隠れていると…
ヒジオはいつもの通りに私を包んでくれた。
「麻里絵ちゃん、宅飲みするの?」
「うん。」
「好きなお酒は?」
「ワインと缶チューハイ。」
「じゃあ、好きなの選んで…」
電車を降りるタイミングで、いつものヒジオ優勢にバトンタッチして、スーパーのカートをヒジオが押す。
何故か腰を抱かれて、逃げられないようにホールドされている。
「そんなに…飲むの?」
言われて見れば、私は缶チューハイを10本も入れている。
「ヒジオも飲めばいいし、明日の分。」
「ふうん…」