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きっかけは映画館
第5章 ラブシーン
っはぁあ?
どうするとそうなるのか、肘カックンで目覚めると思った肘男は、頭が背もたれにダイブし、支えを失った肘先が、パタンと開いて…
私の太ももに落ちてきた。
キッと睨んでも肘男はうっすら唇を開けて爆睡中。
おい、腕を退けろ〜
更に悪化した体勢に、気づくとヒロインは薄いシーツにくるまっていた。
てか、映画の中だけだよね。真っ白なシーツに裸でくるまってるなんて…
あの体勢にどうやって持ち込むの?男も女も…
季節、夏じゃないしそれに普通シーツだけで寝ないでしょ、てか、あのシーツこの後邪魔になるよね?
ああ、美しいベッドシーンなんて、やっぱり作り物の世界よね〜
っあぁ、邪魔といえば、肘男の手よ。
なんだかじんわり熱が伝わって…もう…
袖口を摘まんで向こうに戻したいけど…
周りから見られるのもね。
チラと反対隣を窺えば、隣の女性は彼氏の肩に頭を乗せて、彼氏は彼女の肩を抱き、たまに髪を撫でている。
そ〜いうの部屋かホテルか、せめてカップルシートでやってよねぇ!!
って、また知らない間に男優が女優と一緒にシーツにくるまっているじゃない…
はぁあ〜、やっぱり恋愛物なんて一人で観に来るべきじゃなかった…
でも、隣のカップルも自分たちのことでいっぱいいっぱいなんだから、誰も見ていないんじゃない?
この邪魔な肘男の腕を、予定通り摘まみ出せばいいわ。
汚物を摘まむような手つきで肘男の袖口に指を近づけた時だった。
肘男の手のひらがキュッと閉じて、私の太ももを握るような形になる。
えっ…やっ…
一応映画館だし、小声で抑えたけど…
まさかの、女優が胸にあてがわれた手に反応した声と、被ってしまった。
それがまた恥ずかしくて私は俯いた。
てか肘男〜