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きっかけは映画館
第5章 ラブシーン
肘男もスクリーンに集中しているようで動きが鈍くなる。
その隙にスカートを直そうと試みた。
ひぅう…
どうやら肘男が気配を察したようで、右手を握り、指の股を…
人差し指と中指の間の指の股を舐め始める。
チロチロとそこに何かあるかのように舐めている。
引っ掻くように転がすように変化をつけて舐められる。
先ほどのシーンの内容を連想させ、侵入する左手のその先を舐められているような気分になる。
ふぅ…
肘男の鼻息は荒く、濡れた部分に息がかかるとスウッと寂しい感じがする。
それがバレているのかまた舐め始めるのだ。
スクリーンの中の二人が激しくなるにつれ、私は抵抗する気が失せてきて、
肘男が調子に乗って指の股の位置を変えて舐める。
中指と薬指、薬指と小指の間を舐めると、股の端っこを擦るように舌裏でゴシゴシとする。
スクリーンでは、男優がラストスパートに向けて腰を揺すり、女優が男優の腰に脚を絡める。
女優はギリシャ彫刻のようにドレープの寄ったシーツを腰に纏い上手く繋がっている部分は隠れているが、
あの中で起きているだろうと妄想する出来事を、肘男が舌と私の指の股とで再現しているのだ。
『愛してる…』
言ったのは肘男でなく男優だ。
だが、肘男の動きがピクリと止まる。
そして、口を私の手から離したかと思ったら、何か囁いて甲に口づけした。
聞こえなかったが囁いたと思ったのは、濡れた指の股に断続的な風を感じたからだ。
その仕草を美しいと思った。
一瞬目を奪われたが、相手は痴漢。
ここで気を緩める訳にはいかない。
私はまた手に力を入れ、脚にも力を入れた。