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きっかけは映画館
第27章 おうちで映画


ってバイクのエンジン掛けて跨がれば、ヒョイと飛び乗ってしがみついてくる。

「バイク嫌わないでね?」

って言ったら、

「別に嫌いじゃない、こうしていられるから…」

とギュッとしがみつかれた。

やっばい、やっばい、愚息が聞き耳立てて、出掛けたくなくなっちゃいそうだ。

ポンポンと組まれた手を叩き出発の合図を送ると、モゾモゾと腹を叩かれ返事がくる。

ブォオン…

エンジン吹かして出発、気分最高〜

スタートすれば麻里絵ちゃんはもっとギュッとくっついてくる。

10分ちょっとの超短い旅?



で、あっという間に到着〜。

麻里絵ちゃんの家は新しくてハイツって感じだけど、通りから誰でも上がってこられそうな外階段。

うん、これを理由に我が家をオススメしよう。

「お邪魔します。」

やっと正式にあがることができた。


2週間ちょいで十分早いかもしれないが、俺にとっては長くて辛い時間だった。


「ヒジオ、お茶でも飲む?」

「すぐ戻るからいいよ。」

麻里絵ちゃんが寝室に行く間にソファーに座って大人しく待つ、ひたすら待つ。

だけど…何とはなしに…見てしまったんだ。

壁に年間カレンダーが貼ってある。

オータムフェアのスタートとか、企画最終…

そして、ゆうじの誕生日…ゆうじって、裕司って書くんだ。

裕司の誕生日は7月14日、そして、翌日には【裕司、島へ】

そしてオータムフェア開催前日の7月31日が、麻里絵ちゃんの誕生日…

本当に仕事も忙しい中…二人の誕生日が近いところで、転勤が決まって…

誕生日の翌日かぁ…

何だか自分とは関係ないことなのかもしれないが、気になって仕方ない。

裕司って、本当に潔い奴だ。

ゴールデンウィーク前の日曜日に大きな×がついていた。この日が別れた日、もしくは転勤を告げられた日なんだろうか。
だとすると翌々週の金曜日が俺達の出会った日。

ほんの2週間ということだ。

映画を観に行く約束をしてた。お互いの誕生日もある。なのに、ついて行かない返事と同時に会わないなんて…
本当に勇気のある潔い行動だ。


麻里絵ちゃんは、俺と出会わなかったら、出発前日の裕司の誕生日をどうしようと思っていたのだろうか…
そして、今は、どう思っているのだろうか。短くても5年以上、長ければ10年近く付き合っていた男を…




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