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きっかけは映画館
第27章 おうちで映画
「ヒジオ〜?荷物ってどんな鞄に入れればいいかな〜。」
瞑想から現実に呼び戻されハッとした。
「うん?」
俺は麻里絵ちゃんに呼ばれて寝室に入った。
ベッドの上にスーツが3着とブラウスが畳まれていた。
「そうだ。バイクは家からしか乗らないから、ジーパンも持っていかない?」
「うん…あのね、この前のリュックには、入らないから、どんな鞄にしようかと…
ボストンバックじゃバイクに乗りにくいよね。」
「ちょっとの距離だし、買い物バックみたいなので、俺が肩提げにして持つから…」
「トートバッグ?こんなのでいい?」
麻里絵ちゃんが見せてくれたのは、簡単な袋で口も簡単にスナップで止めるだけ。
「うんそれでいい。トートバッグっていうんだ。」
「そうよ、ヒジオの言う買い物バックよ。」
「麻里絵ちゃん…それ、フェアに使えないかなぁ?」
「フェア?」
「入場券の話が出てたけど、入場券分として配布する物にトートバッグを入れたら?
物販にも入れて…
それをヨーロッパならではの柄のものとか大きさとかいくつか揃えて…」
「フェアでお買い求め頂いたものを入れて帰ってもらうの?」
「そう、フェアでしか手に入らないバックを持ってお客様が街中に出れば、それがフェアの宣伝になるんじゃない?」
「広告も出して、フランスのバックとかイタリアのバックとか、お手頃価格でヨーロッパのトートバッグが手に入って、その時だけじゃなく、普段のお買い物にも使えるし…」
「そうだよ、それに配布用のは小さくてもいいんだよ。子供が持つような手提げでも…」
「いいわね、ヒジオ。でも、ヒジオのところでって、立花女史とは別の部署よねぇ。」
「俺が立花女史も上手く説得して、鞄部門と共同にしてもらうよ。早いうちに正式依頼としてファックスでもメールでも貰える?」
「さすが、ソーシャルアドバイザーだね、ヒジオ。」
なんて、荷造りもせずに仕事の話をしてしまった。
まさかこれが、フェアの切り札になるなんて、この時は俺も麻里絵ちゃんも思いもよらず…
そして…晃くんも一役買ってくれることになるなんて…