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きっかけは映画館
第31章 日曜日
ほら、とヒジオが出したのは、3000ピースのジグソーパズル。
白い建物や海や木が似通った色合いで難しそうだった。
パネルを先に組み立て、ベッドの上に置くヒジオ。
「ここでするの?」
「うん、ゴロゴロしながらね。」
ヒジオと並んで寝そべり、箱にパズルを開ける。
私が端や角になる部分を選り分けているのにヒジオはポイントになるピースを見つけては絵を見ながら大体の所に置き始めた。
「ヒジオ、いつもそうやって置き始めるの?」
「ああ、麻里絵ちゃんみたいにすると飽きちゃうから…」
違う所があってもいい。
ヒジオは端を見つけると選り分けた方に入れてくれるから、私も目立つピースを見つけるとヒジオに渡す。
「麻里絵ちゃん、海外旅行って行ったことある?」
「ハワイと香港だけ…ヒジオは?」
「アメリカだけ…ヨーロッパって何ヵ国も行きたいし、それだけ日程取れないよなぁ。」
「そうね、でもいつかは行ってみたいな。ヒジオは駐在になることはないの?」
「ああ、海外に住むのは嫌だから、本社勤務限定のソーシャルアドバイザーになった。」
「じゃあ仕事で海外に行くこともないの?」
「偉くなって、語学力があれば、出張はあるよ。でも基本2部署以上の合同案件の時だから、なかなかチャンスはないね。
仕事で行っても観光の暇なんかもらえず楽しくないよ。」
「ふうん、そんなものなのね、商社マンて海外飛び回って、合間に遊んでるんだと思ったわ。」
「それ立花女史に言ったら、殺されるよ?」
「ふふっ…」
仕事の話も繋がりがあるからか、自然に出来るし相手の事を知ろうと思う。
パズルを進めながら色々と話した。
「ん〜、ちょっと休憩しよ?珈琲入れてくるよ。」
ヒジオは飽きたのかさっとリビングに向かう。
私は見つけた端を繋げるのに凝っていた。
「ほら、麻里絵ちゃん休憩。あんまり早く仕上げたら、パズルだらけになっちゃうよ?」
起き上がって珈琲を飲む。
ゆったりとした時間もヒジオと共有した。