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きっかけは映画館
第32章 お仕事!!
麻里絵ちゃんは家に帰るようなことを言ってたのに、俺の惣菜も買ってしまったという。
仕事中に会社のパソコンでメールをしたけど、残業までしてお疲れなんだと思う。
そんな状態でも俺を忘れてしまうのではなく、帰ることを忘れて、俺の分まで買ってくれたことを嬉しく思った。
でも、俺の家は、まだ『行く』場所で、『帰る』場所ではないようだ。
まあ、付き合い始めたばかりだし、焦らない…と自分に言い聞かせた。
「そういえば、明日はよろしくお願いいたします。」
「そんな改まらなくていいよ。仕事の一環として正当な業務だから…」
麻里絵ちゃんと食事しながら仕事の話をした。
「こんなドタバタ、ぐちゃぐちゃなクライアントいる?」
「いや、もっと質の悪い顧客は沢山いるよ。
発注してから値引き交渉してきたり、数量を変えろとか、間に合わない時期に大量発注してきてクレームつけたり。」
「そういうのもヒジオたちの仕事なの?」
「ああ、1部署で成約まで行った案件でも、クレームや対応不可能な問題が発生するとうちの部署の範疇になる。
支払いが滞る理由や発注が遅れた理由、どんな要求を持っているのか確認して、和解や妥協案を提示したり、
部内の取り纏めとカスタマーセンターの両方が担当だね。」
「ふぅん…大変だね。」
公私混同してはいけないと、ヒジオが私だからと無理を聞いているのではないかと確認した。
「明日の訪問はね、そんなに改まる必要はないよ。
初日に優希ちゃんがイートインの案を話してたから、それは翌日には立花女史に話してある。
今回の話をしたら、立花女史の方から2回目の商談を設ける必要があるって話してきたんだよ。
あの人が見切っていたら、動かないからね。
逆にイートインの問題にたどり着いたことで、立花女史は評価してくれて、乗り気になってるんだと思うよ。」
「そうなのかな…」
「まあ、そのための明日の訪問なんだし、細かい話は明日ね。
優希ちゃんともフェアにやりたいし、仕事のoffははっきりしたいから、この話はここまでね。」