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きっかけは映画館
第33章 ヒジオ来訪
エスカレーターで上がってくると、色とりどりの水着が目に入り、その奥に御中元コーナーがある。エスカレーターすぐに看板があるので奥に誘導するようにはなっているが、
御中元コーナーを利用したい年齢層のお客様は、水着コーナーを通らずに、壁際を通ってやってくる。
そして、水着コーナーが目的のお客様は、御中元コーナーは見向きもせずに帰っていく。
エレベーターは御中元コーナー裏にあるけれど、やはり逆の動きになっていて、そのままエレベーターに戻っていく。
壁伝いに水着コーナーに回ったお客様はエスカレーターで降りていくが…
最上階の残り半分はレストラン街で、昼時のお客様の動向も確認したいと思った。
催事場、レストラン街が最上階にあるのは、エレベーターで一気に登って頂いた後、中央のエスカレーターで他の階を見て頂き、購買意欲を擽る為である。
その導線が催事場のレイアウトで断ち切られてしまっては、効果が薄くなってしまうのだ。
ハロウィンのレイアウトはそこを考慮しなければならない。
ポン…
「えっ…ヒジ…カタさん。」
「ま、間宮さん。お待たせしてしまったようで…」
「あの、どちらから上がって来られました?」
「エスカレーターですが。」
「部長が、居ませんでした?」
「もしかして…ずんぐりとした穏やかな感じの?」
「はい。」
「水着コーナーのお客様に厳しい視線を浴びて、壁際に立ってましたが、やはり、そうでしたか。」
「では、そちらの階段脇に事務室があるので一緒にお願いします。」
ヒジオを連れて階段脇に向かうと、かなり小さくなった部長がすぐ側にいて、エスカレーターの上がり口は、もう死角になるところに立っていた。
「部長、土方氏がお見えになりました。」
「ああ、申し訳ないです。」
「本日はよろしくお願いいたします。」
「とんでもない、わざわざご足労いただいて…」
取り敢えず、皆でそのまま事務室のミーティングルームに移動した。