- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
きっかけは映画館
第34章 おうちに帰る
「ふぅ〜、ただいま。」
今まで部屋に帰ってこんな挨拶をしたことがなかった。
金曜日から空けていた部屋が、自分のものではないような気がして、誰も答える人がいないのに挨拶した。
【無事ついたら連絡ください。】
ヒジオにラインして、冷蔵庫から缶チューハイを出す。
明日のことを考えると眠れなくなりそうで、ヒジオに甘えてしまいそうで帰ってきた。
軽く飲んで寝よう。
お風呂の支度をして、ついていないテレビをぼぉっと見ながら飲んでいるとヒジオから返事がきた。
【無事ついたよ。麻里絵ちゃん、明日は全力でサポートするから安心して、ゆっくり休んでね。】
ヒジオからのメッセージに涙が出た。
こんな時だからこそ、一緒にいて甘えればいいのに、それが出来なかった。
一人になりたいとか、ヒジオと居るのが嫌だったわけじゃない。
頼りすぎて、ヒジオがいないと何も出来ない人間になってしまいそうで怖かったのだ。
【送ってくれてありがとう、明日は頑張るね。そしてよろしくお願いします。
お風呂入って寝るね。おやすみなさい。】
【おやすみなさい。】
すぐに返事が来て、チューハイを空けてお風呂に入った。
「おやすみなさい。」
また、天井に挨拶して布団に入る。
残業してまとめた資料をどの順番でどう説明するか考えるとなかなか寝付けなかった。