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きっかけは映画館
第37章 同棲?同盟?
「そう見えないかな?」
「……」
彼女は私とヒジオを交互に見る。
「おかげさまでね。あれをきっかけに正式に付き合っているよ。
俺の彼女。でも紹介しない。俺のだし、君には関係ないからね。
そして俺も彼女のものだから。きっかけをくれたことには感謝するけど、君との時間はないから。」
ヒジオの言葉に肉食部の女は震えて怒っていた。
「土方さんて、女性からの誘いを断らないって噂だったから、誘ってみただけよ。」
彼女はきっと私が動揺すると思ってこんなことを言うのだ。
「過去のことでしょ、私、ヒジオから聞いてるし、そんなことじゃ驚かないわよ。それに今日も急いでるの。買い物して一緒に夕飯作らなきゃだから、
きっかけをくれたことは私も感謝してるわ。ありがとう。」
わなわなと震える彼女から向きを変え、
「じゃあ、失礼。」
とヒジオが一言残して歩き始めた。
ヒジオの腕はずっと腰に回されたままだった。
「ねぇ、ヒジオ…手…」
「麻里絵ちゃんは嫌?」
「嫌じゃないけど…」
「やっぱり会社付近ルールは止めた。
商談も進んでるし、隠す必要ないし、俺達ちゃんと仕事のオンオフわきまえてるし…
それに……」
「ん?ヒジオ?」
「手が勝手に麻里絵ちゃんに吸いついちゃうのを阻止する方が疲れる。」
「ヒジオが…じゃないの?」
麻里絵ちゃんはクスクス笑ってる。
「俺は、自分で決めたルールだしって説得してるけど、手が言うこと聞かないんだ。だから俺も我慢するの止めた。」
麻里絵ちゃんは更に笑って、俺が回した手に手を重ねてくれた。