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きっかけは映画館
第37章 同棲?同盟?
「蕎麦屋がないから、引っ越しパスタね。」
ヒジオが笑ってパスタ屋に入る。
そしていきなりサングリアとオードブルをオーダーした。
「お酒飲んじゃうの?」
「だって引っ越し祝いだし、もう運転ないから…
ちゃんと片付けはするよ?」
「うん、わかったょ。」
ほどなくサングリアが運ばれる。
「「かんぱーい。」」
引っ越し祝いというけれど、ヒジオにとっても引っ越ししたことはお祝いなんだと思った。
一緒に暮らすことを喜んでくれるんだと思うと嬉しく思えた。
「付き合い始めてから、こうして麻里絵ちゃんと二人きりで外食するなんて初めてだね。」
「そうだったかしら…」
「うん初めてだよ。」
ヒジオが言うならそうなのだろう。
嵐のようにやってきて、怒濤のような毎日で、いつも一緒にいて…
正直、よくわからなくなっていた。
「麻里絵ちゃん真面目だからさ、俺とのこともあんまり気負わなくていいんだよ。」
「え…どういう意味?」
「一緒に暮らすからご飯は自分が作らなきゃとか、俺を待たせないように仕事切り上げなきゃ、みたいなこと考えなくていいんだよ。
今まで一人で暮らしてた時のようでいいんだ。俺は麻里絵ちゃんと一緒の空間にいられるだけで幸せなんだからね。」
そこまで言い切れるヒジオに、まだまだ気持ちが追い付いていないように思った。