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きっかけは映画館
第38章 きっかけは映画館
最後のやり取りの時に、ヒジオはコホンと小さく咳払いしていた。
私が残業することを心配し、待っていてくれるという意味だろう。
だから、私も『追って連絡する。』と答えた。
業務連絡の中でのヒジオとのやり取りに、受話器を置いたまま、ぼぉっとしていた。
「間宮さん、どうだった?」
部長の声にハッとして見れば、部長は図面とにらめっこしたまま話しかけてきた。
「は、はい。早速スイーツ部門がテナント入りの可能性を視野に入れて開拓してくれることになりました。
早々にテナントスペースが提示出来るように準備する必要があるそうです。」
「わかってる。」
「それと招致にあたっての契約条件についても検討する必要があるそうです。打ち合わせをして商慣習などの知恵をいただくようお願いしました。」
「間宮さん、うちの箱貸しと、テナント手数料方式は知ってるよな。」
「はい。」
「基本こちらが提示出来るのは、二つの方式かそれの組み合わせだ。
そして箱造りの費用負担の問題もある。自分でも調べて、ただ相手に迎合するのでなく、説明できるようにしておけ。お前の当面の仕事はそれだ。具体的にだな、月売上が50万だとロイヤリティがどうなる。100万だと…といったようにシュミレーションを作るんだ。」
「はい。」
「こっちで出来たスペースに、そのフロアの利益の坪単価を掛けて、それに見合う収益が確保できるかシュミレーションするんだ。」
「わかりました。」
すぐさまパソコンに向かい、営業データにアクセスして作業に取り掛かった。
各チームやることが沢山ある。とりあえず部長の指示を元にシュミレーションを作成していく。
「麻里絵先輩、ランチタイム終わっちゃいますよ。ランチ行きますよ。」
また優希ちゃんに声を掛けられるまで没頭していた。
「あっ…うん…」
「ほらほら、腹が減っては戦は出来ぬ。」
部の皆に送り出されるようにして部屋を出た。