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きっかけは映画館
第38章 きっかけは映画館
【麻里絵ちゃん、そろそろ終電になるよ。】
【うん、今ちょうど片付けようかと思ったところ。】
ヒジオから連絡が入るまで残業し没頭していた。
ただ、そうなることは覚悟していて、惣菜は買っておいた。
部長も田中君を帰した後、一人で図面とにらめっこしていた。
「そろそろ帰るか?」
「はい、電車もなくなっちゃいますし…」
「戸締まりはしとくから先に出ろ。」
彼氏がいることは皆が知っている、ただ相手が変わっていることは優希ちゃんしか知らないが、連絡を取り合っているし、部長が先に帰ることもあるから、気遣ってくれるのだろう。
「では、お先に失礼します。」
挨拶してすぐさま社屋を後にした。