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きっかけは映画館
第38章 きっかけは映画館
ヒジオが家族みたいに受け入れられている場所、ヒジオに連れて来られた私も家族みたいに受け入れてくれる場所。
何だか特別な存在になったんだということを実感した。
「美味しいだろ?麻里絵ちゃんそろそろ緑茶ハイに変える?」
「うん。」
ヒジオも我が家に帰ったようにリラックスしていて、どこか素になっているように感じる。
長い店名での飲みと違い、リラックスしてるし、自信があるような感じだ。
「へい、お次〜」
モモとボンジリと皮、他のお客さんは注文してるし、コースではないようだけど、ヒジオ専用のコースのように、注文しなくても次のお料理が出てくる。
「あ〜、大将、これも美味しいです。もっと早くに来たかった。」
「ご、ごめんね、麻里絵ちゃん。隠してたわけじゃないけど…」
「副長も、こんな親父臭い店なんか紹介しづらいわよねぇ。」
「そ、そんなことないっすよ。」
「まあ、麻里絵ちゃんだっけ?これから沢山きて巻き返してくれりゃあいいから。」
あはは…
店内こぞって皆が笑う。
本当に暖かい店だ。
「じゃあ、これぞ俺が作ったツクネに秘伝のタレ、新鮮卵の月見ツクネだ。」
甘ダレの芳ばしい香りがしゃもじの動きに乗って流れる。
ふっくらとしたボリュームたっぷりのツクネとプリっと盛り上がった黄身の乗ったお皿をヒジオが受け取る。
「麻里絵ちゃん、これ絶品だから。」