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きっかけは映画館
第38章 きっかけは映画館


おやっさんは冗談めいた女将さんの嫌みをまだ引き摺って笑いにする。

「じゃあ、大将と女将さんは何て呼びあっていたんですか?」

「は?ババアは昔からババアだ。」

「あらやだ、今でも、ひぃ君、みっちゃんって呼んでるじゃない。私達ね、幼馴染みで小さい頃からずっと一緒にいるのよ。
だから、子供の頃からその呼び名ね。」

女将さんの話に大将が顔を真っ赤にして照れている。口は悪くてもやっぱりお互い愛し合っているのだ。

ヒジオと私もそんな風になるんだろうか、いや、なりたい。

「へい、お待ち〜」

ヒジオの横顔を覗いていると、間を割るように大将のしゃもじがやってきた。

ヒジオがこっちを向いて、私が覗いていたことに気づき視線が絡み合う。
うん、この人の事が好きだ。とりあえずそれだけははっきりしているのだ。


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