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きっかけは映画館
第8章 食事
麻里絵ちゃんは素っ気なくて、多分約束通りこの店を出たら終わりにするつもりなんだ。
何とか次に繋げなくちゃ。
料理は旨いけどあんまり味わえなくて…
次の料理をメニューで選んでいた。
「ヒジオは彼女どのくらいいないの?」
「へ…ああ、学生時代に付き合ってた彼女と遠距離になって、就職して2年で別れた。
それからは彼女はいない歴3年。」
「ふ〜ん、ヒジオ普通にしてたら、モテそうなのにね。」
「いや、就職時は彼女持ちって広まってたから、誰も寄り付かなくて、別れたってのがじわじわバレて、皆、お試しみたいに寄ってきて、何か社内恋愛って面倒くさいなぁって、仕事に集中してたらチャンスもない感じになっちゃって…」
「ふうん…、遠距離って難しいかなぁ。」
麻里絵ちゃんが何で別れたかなんて知らないから、訊かれたままに答えてしまった。
「ん〜、やっぱ、なかなか会えないしさ、金かかるし…、んで会えない平日もお互い束縛し合って、何か窮屈になりだしたんだよね。
結婚するには、俺が転職か彼女がそうするか辞めるしかないし…
そんな時に会社の飲み会で朝まで飲んじゃって、浮気疑われた。
女なんていなかったんだけどさ。信じてもらえなくて…
電話で口喧嘩して、別れるって言われて…そのまま…
でも彼女すぐに結婚したんだ。地元のダチから俺と二股掛けてる期間があるくらいの速さだったって話を聞かされて、しばらく恋愛はいいやって、適当にしてた。」
「ふうん、遠距離って難しいのね。」
麻里絵ちゃんは俯いたまま、料理を口に運んでいて、表情もわからないし、地雷踏みたくないから、俺もそれ以上話さなかった。
「お次は魚の風呂上がりで…」
旨そうな金目鯛の煮付けがやって来た。
「わぁ〜」
「麻里絵ちゃんどうぞお先に…」
同じ魚を箸でつつくなんて嫌だろうと譲った。
彼女は綺麗に箸を使い魚を取っていく。しかし、まだ半分も空かない大ジョッキが気になった。