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きっかけは映画館
第40章 日の出
「じゃあ、そこまで言うなら、私の質問に答えていただこうかしら。」
立花女史の表情は氷のまま、口角だけを上げた笑みを作る。
『氷の微笑』なんてタイトルの映画があったけど、美人さんの笑わない笑みほど冷たく怖いものはない。
「は…はい。」
なんとか意気込みを言葉に変えたが、どんな質問が来るのか、さっぱりわからない。はいと言ってしまったけど、部長決裁のいる案件への回答は出来ないのに…
「うちの、土方君とは、
どういう関係?」
「ヒ…サオ…と…?」
ヤバい無意識に下の名前を口走ってしまった。
今更、商談で会っただけの関係とか誤魔化せないじゃない。
特に商談相手との恋愛は禁止されてる訳ではないし、肉食部の女の件もあったけど、
基本公私を混同させずに商談が終わるまでむやみに公表しないことにしていたはず…