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きっかけは映画館
第40章 日の出
「麻里絵…起きて…出発するよ。」
車と違って寝ながら向かえばいいと言えないのが辛いが、あの露天風呂から、二人で日の出を見る。
最初のお試し期間のお出掛けで決めた約束をどうしても実行したかった。
「ん…ヒサオ…」
「夏場だから日の出も早くて辛いだろうけど…行くよ。」
「ん…ごめんね、ヒサオの方が疲れてるはずなのに…」
二人で支度してまだ真っ暗な中、荷物を持って家を出る。二股鞄をリアシートに跨がせて、麻里絵をその上に乗せる。
メットを被せながらキスをする。
真っ暗で誰もいないのに辺りを窺いキョロキョロする麻里絵は可愛い。
夜風に切られるのは夏でも冷えるからと、ベルトで互いを繋いだ上に麻里絵のGジャンの袖を結ぶ。
俺の腹でモゾモゾと指を動かしながらも、キュッと抱き着いてくる体温に、前回のお試し期間とは違う距離の近さを感じて嬉しくなる。
眠くなったり休憩したい時の合図を再確認してエンジンをかける。
後ろでビクンと体を震わせた後、更にグッと抱き着かれて、しばらくご無沙汰な違う処のエンジンもかかりそうだった。
『いくよ。』
腹に回された手をポンポンと叩くと共に振り向くと、コクンと頷きメットが背中に当たる。
やはり前回より、心も体も近づいた。背中にいるとはいえ、一体になった経験を実感する。
一度エンジンをふかせてから、暗闇の中をスタートした。