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きっかけは映画館
第40章 日の出
空が白み始めて少し周りの様子が窺えるようになってきて、ローズガーデンを通り抜ける時には、麻里絵は俺の腹を叩いて、伸ばせない腕で指し示そうとする。
頷いて伝え、先を急ぐ。
予定通りまだ暗い中、目的の露天風呂に着いた。
「ふぅ〜、ヒサオお疲れ様。」
「うん、間に合ったね。誰もいないみたいだ。」
掘っ立て小屋からは水音はしない。灯りなどついておらず、暗い中でシャワーを浴びる。
海を見ても、どこから陽が昇るのかすらわからない。
ギギギ…
軋んだ扉の音で麻里絵が入ってきたのがわかる。
風呂も海も日の出も二人きりの独占だ。