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きっかけは映画館
第40章 日の出
ジャブッ…
あっ…ひさ…
チュッ…チュッ…
「おはようのチュウ…」
ヒサオが壁を越えて上体を曲げ、キスしてきた。
おはようも何も、バイクに乗ってた時だってしていたと思うけど…
でも、嬉しくてヒサオの頬に手を添えた。
「さあ、涼んだら出発するよ。」
岩場に腰掛けて涼み出発する。
朝御飯は漁港の市場の漁師飯らしい。
どんなスケジュールか全てヒサオにお任せ、
前回もそうで、それが不安だったけど今回は違う。
どこで何をするのか、ドキドキ、ワクワクだ。
ブォォン…ブォォン…
朝日に照らされた街に響くエンジン音。
まだまだ交通量も少なく、街を独占しているみたいだ。
ヒサオにしがみついて体温を分け合ってバイクで突っ切る。
山のカーブと切り開かれたように現れる海、それを何度か交互に見ると、脇道に反れて下っていく。
降りきると小さな入江に小型の漁船が沢山並んでいた。
「小さな漁港なんだけどね、漁師食堂があって一般の人も利用できるらしいんだ。」
まだ6時になっていないけど7時には閉まってしまうらしい。
本当にいつそんな時間があるんだろうか、ヒサオは色々下調べしているみたい。