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きっかけは映画館
第40章 日の出


「メニューは一種類、お任せしかないらしい。」

「へぇ〜…」



「お客さんたち旅行かい?珍しいねぇ、地の人間以外がくるなんて、決まったものしか出せないけどいいんかい?」

「はい、それで。」

「味噌汁とご飯はおかわり自由だからね。今日は鯵だよ。」


威勢のいいおばちゃんがやってきて、注文を確認して厨房に戻っていく。一人でやっているのか、中にはその人しかいなかった。

包丁の音がしてしばらくすると、おばちゃんがお盆を抱えて戻ってくる。

お味噌汁にご飯、漬物、そして鯵の干物に、鯵のたたきだった。



「これはね、グリコのキャラメルより多く三度楽しめるたたきだよ。

まずは、刺身としてお醤油で、
次に薬味と味噌を一緒に入れてお椀で混ぜてからご飯に乗せる。
最後は熱いお味噌汁をかけてお茶漬けみたいにして食べるんだ。
言ってくれれば熱いお味噌汁持ってくるからね。」

おばちゃんの言うようにご飯もたたきもたっぷりだった。

「なめろうみたいな感じ?」

「ああ、そうさねぇ、元は船の上で男たちが暖を取るために鍋をかけてて、
鍋に魚を入れたり、たたきをご飯に乗せたり、好きにして食べてた漁師飯だよ。
陸(おか)にあげられた鍋の残骸をもとに、わしらかみさんたちが真似たんだけどね。
男ばっか美味いもん食ってるなんて許せないって…

そのうち、漁が終わって陸に上がってから、ここで朝御飯を食べるようになったんだよ。」


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