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きっかけは映画館
第40章 日の出
「「いただきます。」」
奥に下がったおばちゃんに届くような大声で挨拶し、ご飯をいただく。
言われた通りにまずはたたきをお醤油でいただく。
「「美味しい。」」
「ははっ、そうだろ〜。」
おばちゃんの嬉しそうな声が聞こえる。
ワカメのお味噌汁も漬物も、焼き魚も何もかも美味しい。
3分の1ほど味わったところで、たたきと薬味と味噌をお椀に入れて掻き混ぜていく。
薬味と味噌の匂いがたって食欲を誘う。
それだけで一口味見してから、ご飯に乗せて食べる。
「「ん〜美味しい。」」
ヒサオと目を合わせながらも口から出る言葉も同じだった。
「ヒサオ、獲れたてって一番贅沢だね。」
「うん、おばちゃん、味噌汁ちょうだい。」
「はいはい、お待たせ。」
熱いお味噌汁がかけられる。
「うわぁ、いい香り。」
「お嬢さんのもかけていいかい?」
「はい、お願いします。」
三種類目の味を堪能していった。
「美味しい。」
「朝から贅沢したね。」
「ほら、サービスの珈琲だよ。」
「凄い、食後の珈琲なんて…」
「いや、これはほんとのサービス、ってより私が飲みたかっただけ。多分もう店終わりだから…」
「「ありがとうございます。」」
「しかし仲が良いね。新婚さんかい?」
おばちゃんは一緒のテーブルに座り込み、一緒に珈琲を飲む。
きっと漁師さん相手の忙しい時間が過ぎて、とりあえず営業時間の7時まで店を開けているってところなのだろう。
「「いえ、結婚は」まだ…」これから…」
まだと答えた私とこれからと答えたヒサオは思わず互いの表情を見る。
「あら、余計なおせっかいだったかね。」
「「いえいえ…そんなことは…」」
「まあまあ仲が良いのが一番。」
おばちゃ〜ん、肝心なそこ、俺より先にフライングしないでよ〜
と、思ったが、
麻里絵が『違う』とか『そんなんじゃない。』って反応じゃなかったことにホッとした。