- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
きっかけは映画館
第41章 二人のための岬
「お夕食はお部屋で7時半からになります。ごゆっくりおくつろぎくださいませ。」
と挨拶され玄関が閉められる。
「ヒサオ、離れなんてさらに豪華過ぎるよ。」
「プロポーズとフェアオープン記念とか色々あるからこれでいいの。
離れだったら、気兼ねなくゆっくりできるでしょ?」
「う…そうだけど…」
「夕飯までにお風呂に入ろう?部屋に露天風呂あるし離れは一つしかないから庭も独占だよ。」
「凄いね、ちょっと景色を見ていい?」
麻里絵が障子を開ける。離れが本館より崖地に突き出ているから、まるで、山の中の一軒家のような様相だ。
竹林や庭木に囲まれた芝庭に突き出る露天風呂。
「風呂からも庭は楽しめるみたいだし、汗を流そうよ。」
「う…ん。」
麻里絵は着替える浴衣で悩んでる。
離れの特典で三種類の柄から好きに着られる。
藍色に鮮やかな花火の柄、渋い草木染めに白抜きの竹の柄、白地に淡いピンクの花の柄。
麻里絵は一つずつ手に取って悩んでいる。
「悩む事はないよ、全部着ていいんだよ。」
「えっ…」
「寝るまえのお風呂までと、寝る時と、朝風呂の後、ね、全部着られるんだ。」
「本当、贅沢過ぎ…
でも、嬉しい。」
麻里絵が白地に花柄を選んで抱き締めて喜ぶ。
見た時、一番麻里絵らしいと思ったし、こんなに喜んでもらえるのも、また嬉しかった。