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きっかけは映画館
第41章 二人のための岬
「えっ…あ…花火だ。」
ヒュルルルル…ドォーン…
呆気にとられている間に2発目が上がる。
「近くで花火大会があるらしい。高く上がった花火が目線で開くのが見れるのも、この宿の自慢らしくてね。
まあ、そのぶん海辺の低い花火は見えないらしいんだけど。」
「素敵…こんな位置から見れるなんて、なかなかないわよね。」
「そうだね。」
パッと開いた華の明るさでヒサオの表情が窺える。
とても嬉しそうで満足気だった。
「何から何まで凄すぎで…
ありがとう…忘れられない1日になるね。」
ヒサオが私の肩を抱いて引き寄せる。
ヒサオの肩に頭を乗せて、次々に上がる花火を眺めていた。
「わあ〜凄い。」
フィナーレに大量の花火が連発される。色とりどりの花火が咲き乱れ、色のない大輪の花火が混ざり流れ落ちていく。
ヒュルルルル〜…ドドォーン…
色のものの余韻の中、一層大きな一発があがる。
空一杯に拡がったあと、涙のような光の粒が雨のように降り落ちていった。
「終わったかな…」
「みたいよね。でも何でもおしまいって寂しいわね…」
そんな麻里絵の肩をギュッと抱く。そして部屋に戻ることにした。