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第9章 帰り道

『俺が言うことじゃないけど…いい人見つけろよ。』

喧嘩したわけでも浮気でもなく別れた、裕司の言葉を思い出した。

すぐに見つけるなんてできっこない。
なんて冷たい男なんだろう。

その時は、裕司を責める言葉が浮かんだ。

でも物理的に結婚出来ないとなった恋人に、最大の優しさをもって放った言葉なんだろう。

裕司は何事も計算して答えが出ると思っているタイプだ。
感情にとらわれたりしない。

yesかno、1か0か…
その答えを導き出すのに今までの付き合いの長さとか、私の年齢とかそういった計算はしない人。

そこが潔く見えたし、ついて行けない部分でもあったのだ。



裕司と別れて、約束だった映画を観ることにこだわった。

一応達成して、裕司への引き摺られるような想いにも整理がついたような気がした。

それを寂しいものにしなくて済んだのは、こんなお調子者のヒジオのおかげかもしれない。

そんな風に気持ちを整理していた。