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きっかけは映画館
第12章 商談
「立花さん、若輩者から進言させていただきますが、私達はお客様が求めているものを手に入れるお手伝いをする仕事に携わっているのです。
お客様のニーズを引き出すのも我々の仕事ではないでしょうか。」
「…確かに、言葉が過ぎました。でも、闇雲に探すというのは難しいということをご理解いただきたいのです。」
「はい、すみません。」
「じゃあ、どうでしょう。立花女史は既存の商品リストをご用意いただいているんですよね?」
「はい。」
テーブルに出されたリストには商品名と生産国、定価と写真が載っていてカタログという状態で纏められている。
「一昨日、お話を頂いてから纏めました。部署内で担当者ごとに抱えているデータを引き上げて国別、価格順に並べております。
担当者によってまちまちな管理になっていたものを統一して纏めました。」
「ありがとうございます。今日までの出来る限りのことをご準備いただけたということですね。」
ヒジオは客先である私達と立花女史の間に立ち、中立に話を進めていく。
「はい、あくまでも既存のものです。ですが、中には見知られたものもありますが、あまり流通がなく珍しいものもあります。
そこについても弊社の取り扱い量を併記しておりますので、ご覧になればご理解いただけると思います。」
「それと、立花さん。既存のものでないものを開拓するには、どうすればいいですか?」
「現地の駐在員は各国で日々新しいものを開拓しています。
ただコストやお客様のニーズが読めず、リストに載らないものも沢山あります。
ですから、価格帯や方向性が決まればそれに合った商品を開拓する余地はまだまだあります。」
「では、企画の方向性が決まれば開拓できるということですね。」
「はい、もちろんです。」
「ならば、どうでしょう。ご準備いただいた資料を元に、私と○○デパートさんで交渉を進め、企画の方向性を決めていくというのでは。」
「恐れ入りますが、そうしていただけると。
他にも案件を抱えておりまして。」
そう言い残して、一礼して立花課長は退室した。