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きっかけは映画館
第12章 商談
はぁあ…
ヒジオが私達の気持ちを代弁するような大きなため息をついた。
「気分転換に珈琲でもいかがですか?」
「はい、お願いします。緊張しちゃって…」
優希ちゃんが臆せずあっけらかんと返事をしていた。
「立花課長は優秀なんですがね。お忙しいのもあるんでしょうが、男勝りで、几帳面ですが、男のような幅や遊びを持ち合わせていない。
我々としても扱いづらい課長なんですよ。
いや、仕事は凄く出来る人なので、これからも頼っていくことになりますがね。」
ヒジオは返事した優希ちゃんに話しかけている。
あくまでもビジネスで、私は知り合いでもないといった感じで…
「しかし、どうしましょうか。まずはフェアのコンセプトをもっと煮詰めないとですね。」
ヒジオは珈琲を啜りながら言う。
「それは私達が練らなければならないのですが、ありきたりのものしか浮かばなくて。」
「間宮さん、新しいものを作り出すってのは難しいことですよ。私達はニーズに合わせて物流を開発する。
ただやはりニーズがどこにあるか?ということも視野に入れてますがね。
例えば、8〜10月で秋以外のイベントとかないでしょうか、スイーツ関連の…」
「先程、片桐が申したように、8月は海外旅行シーズンで、旅行に行けなくても弊社で気分を味わえる。イメージは浮かびます。」
「3ヶ月をそれだけで乗り切るにはパンチが足りないですね。」
額に手を置くヒジオが格好よく見えた。
クイクイ…
「先輩…、10月なら、ハロウィンがありますよ?
ヨーロッパってハロウィンの風習あるのかなぁ。」
優希ちゃんは商談というより、私との打ち合わせのようなラフさで私の肘を引っ張り、普段の言葉遣いのまま話し出す。
ヒジオがちょっと驚いて、ククッと笑ってから、
「トリック オア トリート、ですね?」
「そう、お菓子をくれないと悪戯しちゃうよ?って」
ヒジオと優希ちゃんは意気投合して盛り上がっていく。
「ですが、ハロウィングッズの準備としてハロウィンコーナーを設けるのは、いささか単純に思えますね。」