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きっかけは映画館
第12章 商談
「それなら、安価な袋ものしか置けないですもんね。
じゃあ、催事場をハロウィン会場に見立てて、お客様が子供になっていただく。
イートインや試食コーナーを設けて生菓子を会場内でも味わって頂いて、気に入ったものをお買い求め頂く。
イベント仕立てにしつつ、現地でしか味わえなかったものを取り入れる。」
「いいね〜、優希ちゃん。」
ヒジオは優希ちゃんと呼び、私は間宮さん…
あんなに麻里絵ちゃん麻里絵ちゃんと呼んでいたのに…
つまらない嫉妬をしている自分に…気づいた。
「まあ、新商品開拓は方向性や国が決まればお手伝い出来ますし、会場の内装なども…
また行き詰まったらいつでも相談に乗りますよ。」
「頼もしいです。土方さん。」
優希ちゃんは、ヒジオを見つめてウルウルしてる。
元々そういう喜怒哀楽のはっきりした子。
決して媚を売ったり、女の武器を使ったりしているわけではない。
本当に嬉しくて表現しているだけだとわかる。
だけど、出来る男、土方さんは破顔して弛みきった表情で、二つ返事で安請け合いして…
ヒジオ…優希ちゃんは、彼氏持ちだから…
私は心の中で毒づいていた。
ヒジオは優希ちゃんのことをずっと、ちゃん付けで呼んでいる。
「さあ、色々出てきたね。
間宮さん、後は社に戻ってもっと拡げて煮詰めて行けばいい。
ヨーロッパでのハロウィンの風習を調べたり、現地オススメの新商品を探したり、やること一杯ありそうだな。」