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きっかけは映画館
第13章 金曜日
デザートはほろ苦いモカアイスだった。
それだけはよく覚えている。
甘さと苦味が混ざって、腑に落ちない何かが一緒にストンと喉元を落ちていくような感覚だった。
そしてヒジオの撫でる手が終始温かいのも、記憶に残った。
「麻里絵ちゃん、タクシーで帰るよ。」
「まだ電車あるよ?ヒジオ〜。」
「だって泣き通しの麻里絵ちゃんを電車に乗せられないもの。」
「わかった、そうする。」
子供のようになった麻里絵ちゃんをタクシーに乗せて一緒に帰る。
またしばらくメソメソしていたけど、泣き疲れたのか麻里絵ちゃんは俺に体重を預けたまま眠ってしまった。
はぁあ〜、可愛すぎるよ麻里絵ちゃん。
そして残酷だよ。
映画が始まって、最初の濡れ場までは、俺が隣にいるのを忘れているみたいにスクリーンに夢中になっていた麻里絵ちゃん。
二人が裸になりsexが始まると、ジィーっと俺を見ている。
エロ動画じゃあるまいし、発情しないよ?
そう思って無視してたけど、それでも見られてる。
映像には発情しないけど、君をこんな風に抱き締めて、愛し合ったら、どんなにいいだろうか…
今日は大人しくしてようと思ったのに、君がずっと見てくるから、落ち着かなくなってきた。