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きっかけは映画館
第13章 金曜日
な・の・に…
「お手…」
犬に命じるみたいに手のひらをみせて俺を試す麻里絵ちゃん。
しっぽ振った犬みたいに、待つことも出来ずに、「いいの?」って訊いちゃった。
すると、急に照れたのか途切れ途切れに『手…だけなら…』って、
麻里絵ちゃん、どんだけ可愛くてずいぶんな悪魔なんだな。
でも、気が変わらないうちにさっさと手を重ねた。
するとしばらくして手を返すから、先週みたいに上から重ねて優しく包んだ。
スベスベで小っちゃくて可愛い麻里絵ちゃんの手を撫でずにいるなんて、我慢出来なくて…
怒らないか様子見ながら撫で回した。
濡れ場に差し掛かるとモジモジして、寂しくて抱き締められたいんだなって思ったから、抱き締めてキスして滅茶苦茶にしたい気持ちをグッと堪(こら)えて、手と手の愛撫にすり替えた。
本人は気がついていないみたいだけど、最後の濡れ場の時、俺の手の愛撫とは関係なしに、涙がポロっと零れたんだ。
きっと別れたばかりの彼氏のこと思い出したんだろうなって気づいたけど、
グッと指を絡めて手を繋ぎ、手の甲を擦って願いをこめた。
泣くなよ…俺は麻里絵ちゃんを一人にはしないよ…凄く好きだから…まだ君のこと知らないこと沢山あるけど…愛してるから…
俺に…気付いて…
そんな思いが通じるはずもなく、ポロポロポロポロと涙を零す君に…
泣き止ませることも出来ずにずっと指を絡めて甲を擦っていた。