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きっかけは映画館
第13章 金曜日
結婚するとか、しないとか…その辺が原因で別れちゃったのかな…
ウェディングドレス姿のヒロインを見て涙が益々溢れてたから、そう思った。
ヤりたい、自分の色に染め上げたい…
男の欲望と、純愛って難しいよな…
映画を見てそう思った。
元彼、元カノの影にお互いに怯える二人。
めでたく結ばれても飽くなき欲望との闘い。
欲望か…愛か…
そんなのの境目なんてないんじゃないかな…
そんなとことんまで突き止めることなく終わった麻里絵ちゃんの恋。
どちらが良いとか悪いとか…
そんな感じじゃなく別れが訪れた。
結婚にたどり着けなかった自分に悲しくなってしまったんじゃないかな…
きっと映画から深〜い所まで自分で掘り下げちゃった麻里絵ちゃんは、映画が終わったのも気付かないみたいに、ずっと静かに涙を溢し続けていた。
麻里絵ちゃん、抱き締めて、キスで涙を拭いきってあげたいけど…
俺にその役目を任せてくれるか教えてくれよ。
ぼぉ〜とした麻里絵ちゃんの肩を抱いて映画館から連れ出した。
本当は、めでたくリベンジを果たした乾杯で、晴れ晴れ楽しく飲むつもりで予約した店だったけど、
麻里絵ちゃんの涙は渇れることがなかった。
俺は、役不足で黙って肩を抱き背中を擦ることしか出来なかった。
期せずして並んで座る形になって、麻里絵ちゃんの香りとか、綺麗な脚とか、欲情してしまうのは許して欲しいけど…
でも、ギュッと抱き締めてあげたいのにそれも出来なかった。