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きっかけは映画館
第13章 金曜日
結局飲み屋でも泣き止むことはなく、麻里絵ちゃんは壊れたみたいに泣き続けた。
そんな麻里絵ちゃんを電車に乗せるわけにはいかず、説得してタクシーに乗せる。行き先を告げ、一頻り泣いたまま、泣き疲れて麻里絵ちゃんは眠ってしまった。
って…どんだけ破壊力あるんだよ、麻里絵ちゃん…
「お客さん着きましたよ。」
「麻里絵ちゃん、ここで合ってる?」
「う…ん…」
泣いたせいか、疲れのせいか、そんなには飲んでないけどお酒のせいか…
麻里絵ちゃんはフラフラで、
タクシーを待たせて玄関まで送る。
靴を脱がせ、部屋に入れて立ち上がろうとしたら…
麻里絵ちゃんに抱き着かれた。
あ、ヤバい…柔らかい…
すぐに反応してしまう愚息を知られたくなくて、引き剥がそうとすると…
「ヒジオ…一人にしないで…朝まで一緒に居て…」
俺をはっきり呼び、はっきりと言ったんだ。
「麻里絵ちゃん、ヤバいよ。俺、本気で麻里絵ちゃんのこと好きだからさ。
我慢出来ないかもしれない。」
「いいよ…一緒にいて、でも本気なら我慢出来るでしょ?」
俺の胸に顔を埋めて言うから、酔ってるのかどんな表情なのか見えなくて…
例え酔っていたとしても麻里絵ちゃんは手厳しかった。
無理矢理引き剥がすと、素面ではないようで…
「じゃあタクシー待たせてるの帰すから…」
麻里絵ちゃんを玄関口に座らせて、運ちゃんには謝りまくって急いで戻ってきた。