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月下の幻影
第1章 月下の幻影
「小学生と、大学生の男の子だったんだ。その二人は兄弟でさ。最初、弟の方が溺れちまって、それを助けようとして、兄も海に飛び込んだんだけどね……」
「……!」
「結局、二人ともさ……」とタクシーの運転手はぽつりと言った。
「それからだよ、夜になるとあの海に幽霊が出る、なんて噂が立ち始めたのは」
「……」
“幽霊”
海で溺れていたあの男の子の気味悪い笑みが、真琴の脳内に映し出された。
「まぁどれも根も葉もない都市伝説みたいなもんさ。溺れてる男の子が見える、とか子供の泣き叫ぶ声が聞こえる、とかさ」
まぁ、オカルト話だろうけどよ、とタクシーの運転手は軽く言い放った。
「じゃあまたね、お嬢さん」
「はい。ありがとうございました」
駅に到着し、タクシーから降りると、バタンと後部座席のドアが閉まった。
そして再びタクシーは発進し、海の方面へと走っていった。