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月下の幻影
第1章 月下の幻影
ガタンゴトン、ガタンゴトン────
電車に揺られながら窓の外を眺める真琴(まこと)の視界に、緑いっぱいの、のどかな風景が映った。
一体、この電車はどこに行き着くのだろうか────
自分の意志でこの電車に乗っているはずなのに、真琴の頭の中にはそんなおかしな疑問がふわりと思い浮かぶ。
彼女が一人旅を始めたのは、今から三ヶ月前のことだった。
もともと旅行好きというわけではない。が、当時彼女は、自分の身に起きた“とある出来事”から精神的に追い詰められていた。彼女はそれをどうしても受け入れることができなかった。
そこから逃げ出す為、現実逃避の一人旅を始めたのだった。
行き先は、不明。
彼女のその場の気分で、適当に決める。
だからこの電車に乗ったのも、彼女のふとした思いつきだった。だから彼女は、この電車の最終地点を知らない。
今、真琴のいる車両には、彼女以外に老婆が一人座っているだけだ。