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50センチの距離
第43章 ジンジャーシロップ
衣替え、なんて大層なことする程、服はないんだけど。
そろそろ布団やら季節もん洗濯してしまってもいいかなー、なんて。コインランドリーに纏めて持って行こうとした時。
ピラッと一枚の紙が舞って、床に落ちた。
なんだこれ、と拾うと、ジンジャーシロップのレシピ。

「…あ〜…正月に兄貴にもらったやつ…こんなとこにあったんだ…」

正月、実家に帰ったとき。

「彰、コレ要る?」

と兄貴がくれた。

「岡本さんのレシピ。俺の本の間に紛れてた。俺は苦手だけど、彰は好きだろ。」

「…岡本さん…て、彩乃さん…?」

兄貴はコクリと頷いた。

岡本さん、てのは、兄貴の元嫁、の旧姓…いや、今は離婚してその姓に戻ってるわけだから…旧姓とは言わんのか。
結婚してたときはフツーに彩乃、て呼んでたよな。俺も彩乃さん、て呼んでたし。
いや、離婚して今はもう他人な訳だから、間違っちゃいない。
むしろいつまでもファーストネーム呼び捨てで、オレのオンナづらすんな、て言われるかもしれない。
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