この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
SMを詰め込んだ短編集
第9章 アリスと女王/奴隷(+純愛)
家庭教師に勧められた本を持って、丘の上の木に寄りかかりました。風が頬を撫で、水色のスカートが控えめに揺れます。
活字を追うごとに瞼がゆっくりと重くなっていくのを感じ、ついに鈴は夢の中へ旅立って行きました。
はたと目覚めると、そこは見知らぬ森の中。聞いたことがない鳥の声、薄暗くじめっとした重たい空気に身を縮めます。
「ここ…どこだろ…」
恐怖心を抑えるため、細い両腕で自身を抱き締め、声を出します。
あたりは鳥の声と葉が擦れる音だけ。鈴は立ち上がって歩き出しました。誰か人がいればここはどこか聞きたかったのです。それに帰り方も。
しばらく草を踏む音だけが響いていましたが、遠くに人の声が微かに聞こえました。
「だれ…?あの!どなたかいらっしゃるのですか!」
不安と期待に胸をぎゅっと掴み、震えながらも大きな声を出しました。
道の向こうにふたりの人影が見えました。
「あ?」
「誰だ?女?」
小走りに近寄ると、そこにはまるで鏡に映したような、そっくりな双子の青年。
「あの、道に迷ってしまったみたいで…」
人五人ほどあけて鈴は歩みを止めました。
顔を見合わせ、それから同時に鈴を一瞥した双子は一歩、鈴に寄りました。
「道を訊ねたい?」
「帰り方がわからなくなった“アリス”?」
双子の目の色が変わります。言い知れない恐怖を覚えた鈴は一歩後退しました。
「道を訊ねるならば代金を」
「帰り方を知りたければ代金を」
一歩。双子が踏み出せば鈴が下がります。
「すみません、お金を持っていません…」
緩く首を横に振って、それでも双子から目を離せません。まるで獰猛な肉食獣に睨まれている気分です。
活字を追うごとに瞼がゆっくりと重くなっていくのを感じ、ついに鈴は夢の中へ旅立って行きました。
はたと目覚めると、そこは見知らぬ森の中。聞いたことがない鳥の声、薄暗くじめっとした重たい空気に身を縮めます。
「ここ…どこだろ…」
恐怖心を抑えるため、細い両腕で自身を抱き締め、声を出します。
あたりは鳥の声と葉が擦れる音だけ。鈴は立ち上がって歩き出しました。誰か人がいればここはどこか聞きたかったのです。それに帰り方も。
しばらく草を踏む音だけが響いていましたが、遠くに人の声が微かに聞こえました。
「だれ…?あの!どなたかいらっしゃるのですか!」
不安と期待に胸をぎゅっと掴み、震えながらも大きな声を出しました。
道の向こうにふたりの人影が見えました。
「あ?」
「誰だ?女?」
小走りに近寄ると、そこにはまるで鏡に映したような、そっくりな双子の青年。
「あの、道に迷ってしまったみたいで…」
人五人ほどあけて鈴は歩みを止めました。
顔を見合わせ、それから同時に鈴を一瞥した双子は一歩、鈴に寄りました。
「道を訊ねたい?」
「帰り方がわからなくなった“アリス”?」
双子の目の色が変わります。言い知れない恐怖を覚えた鈴は一歩後退しました。
「道を訊ねるならば代金を」
「帰り方を知りたければ代金を」
一歩。双子が踏み出せば鈴が下がります。
「すみません、お金を持っていません…」
緩く首を横に振って、それでも双子から目を離せません。まるで獰猛な肉食獣に睨まれている気分です。