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SMを詰め込んだ短編集
第9章 アリスと女王/奴隷(+純愛)
「女王のコインなんか一枚だっていらないのさ」
「俺らが欲しいのは、“アリス”の蜜…」
「喉が焼けるほど甘くって、あの味を覚えたら他のものなんかとても口に出来ない」
「ああ兄さん、俺お腹が空いてきた」
「奇遇だな。俺もだ」
「おや、あんなところにオイシソウナ…」
「あマイ蜜をモッていル…」
「オいしイ蜜…アリス…」
「おれタチに…」
「いやぁぁぁぁぁ!!!!」
遂に鈴は恐怖に勝てず、背中を向けて走り出しました。
ゾンビのように両手を前に出し、ヨダレを垂らしながらのそのそと歩く双子から少しでも離れたくて、道も分からないのにとにかく走ります。
走って走って、そうして木の根に足を取られ、転んでしまいました。どさりと草の上に倒れ込み、慌てて後ろを振り返ります。
双子の姿は見えませんでした。
いきなり知らない森に来て、得体の知れない双子を目の当たりにして恐怖に涙が零れました。体も細かく震えだして、手を付いて転んだせいで泥だらけになってしまったワンピースを見て更に涙が零れます。
お気に入りのワンピースが汚れてしまった。それにここはどこ?おうちに帰りたい…
グズグズと泣き止まないでいると、ふわりと甘い匂いが鼻腔を掠めました。
「おや、お嬢さん。こんなところで、どうして泣いてるの?」
ひどく優しい声でした。顔を上げると鬱蒼と繁る森に似つかわしくなく、ぴしっとタキシードを着こなし、シルクハットを被った美しい青年が立っていました。
青年は小首を傾げると鈴の前に膝をつき、真っ白いハンカチを差し出します。
「泣いていては可愛い顔が台無しだよ。これをお使いなさい」
しかし鈴は手を伸ばしませんでした。転んだせいで泥だらけになってしまったので、この真っ白いハンカチを汚すのは躊躇われたからです。
それを察してか、青年は至極穏やかに微笑むと、何も言わずにハンカチで鈴の濡れた目元を優しく拭いました。
「俺らが欲しいのは、“アリス”の蜜…」
「喉が焼けるほど甘くって、あの味を覚えたら他のものなんかとても口に出来ない」
「ああ兄さん、俺お腹が空いてきた」
「奇遇だな。俺もだ」
「おや、あんなところにオイシソウナ…」
「あマイ蜜をモッていル…」
「オいしイ蜜…アリス…」
「おれタチに…」
「いやぁぁぁぁぁ!!!!」
遂に鈴は恐怖に勝てず、背中を向けて走り出しました。
ゾンビのように両手を前に出し、ヨダレを垂らしながらのそのそと歩く双子から少しでも離れたくて、道も分からないのにとにかく走ります。
走って走って、そうして木の根に足を取られ、転んでしまいました。どさりと草の上に倒れ込み、慌てて後ろを振り返ります。
双子の姿は見えませんでした。
いきなり知らない森に来て、得体の知れない双子を目の当たりにして恐怖に涙が零れました。体も細かく震えだして、手を付いて転んだせいで泥だらけになってしまったワンピースを見て更に涙が零れます。
お気に入りのワンピースが汚れてしまった。それにここはどこ?おうちに帰りたい…
グズグズと泣き止まないでいると、ふわりと甘い匂いが鼻腔を掠めました。
「おや、お嬢さん。こんなところで、どうして泣いてるの?」
ひどく優しい声でした。顔を上げると鬱蒼と繁る森に似つかわしくなく、ぴしっとタキシードを着こなし、シルクハットを被った美しい青年が立っていました。
青年は小首を傾げると鈴の前に膝をつき、真っ白いハンカチを差し出します。
「泣いていては可愛い顔が台無しだよ。これをお使いなさい」
しかし鈴は手を伸ばしませんでした。転んだせいで泥だらけになってしまったので、この真っ白いハンカチを汚すのは躊躇われたからです。
それを察してか、青年は至極穏やかに微笑むと、何も言わずにハンカチで鈴の濡れた目元を優しく拭いました。