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SMを詰め込んだ短編集
第15章 SNS/SM
「じゃああとよろしくー」
そう言って太った体育教師はあたしと、もうひとりの男を残してさっさと体育館を後にした。日が傾いた放課後だった。
体育祭で使う器具の点検と数の確認なんだそうだが、なんであたしがこんなことしなきゃいけないの。全然意味わかんない。あたしは確かに学級委員長だけど、そんなもんあたしの隣にいる体育委員がひとりでやればいいじゃん。
ああでもほら、“生田沙良”は優秀な生徒だから。分かりましたと実ににこやかな笑顔を貼り付けて、そんなことおくびにも出さずに、さあさっさとやっちゃおー!なんて無駄に元気な声を出す。
「ええと、平均台が2台と、跳び箱だっけ?何段?」
ああ面倒だ。隣に立ってる男は成瀬京也という、あたしが一番嫌いな男だ。巷では爽やかイケメンで通ってるが、あたしにとっちゃ胡散臭い笑顔を貼り付けた実にいけ好かない野郎だ。とにかく笑顔が嘘くさい。言動も嘘くさい。
だからこんな埃っぽくて暗くて狭い器具室に、こんな野郎とふたりきりなんて真っ平御免なあたしは、成瀬京也に背を向けてバスケットボールの数を数える。
「ねえ、りん」
成瀬京也がそこから一歩も動かず、あたしの背中に話し掛けた。
「んー?」
「昨日、何回イったの?」
「………え、…?」
あれ、今、あたしのことなんて呼んだ…?
何も考えず返事をしてしまったが、いやまさか…。
後頭部を鈍器でガツンと殴られたような気分で、視界がぐらりと揺れる。
「な、なんの話?誰の話?あたし、生田沙良だよ」
もう誰と間違えてるのー!とおどけて見せたのに、成瀬京也は目の奥を鈍く光らせ、口角を上げるばかり。じりじりとあたしに近付くから、あたしもじりじりと後退した。
だけど、ここは器具室。色んなものがごちゃごちゃと押し込まれた狭い部屋は、逃げ場なんかほとんどない。あっという間に8段の跳び箱が背中に当たり、冷や汗すら流れるスペースもない。
「生田沙良…ううん、りん、だろ。なあ、これに覚えは?」
「ひっ…!?」
成瀬京也がポケットから取り出したもの。
それは、昨日あたしが信じられない所に塗ったくった歯磨き粉だった。
そう言って太った体育教師はあたしと、もうひとりの男を残してさっさと体育館を後にした。日が傾いた放課後だった。
体育祭で使う器具の点検と数の確認なんだそうだが、なんであたしがこんなことしなきゃいけないの。全然意味わかんない。あたしは確かに学級委員長だけど、そんなもんあたしの隣にいる体育委員がひとりでやればいいじゃん。
ああでもほら、“生田沙良”は優秀な生徒だから。分かりましたと実ににこやかな笑顔を貼り付けて、そんなことおくびにも出さずに、さあさっさとやっちゃおー!なんて無駄に元気な声を出す。
「ええと、平均台が2台と、跳び箱だっけ?何段?」
ああ面倒だ。隣に立ってる男は成瀬京也という、あたしが一番嫌いな男だ。巷では爽やかイケメンで通ってるが、あたしにとっちゃ胡散臭い笑顔を貼り付けた実にいけ好かない野郎だ。とにかく笑顔が嘘くさい。言動も嘘くさい。
だからこんな埃っぽくて暗くて狭い器具室に、こんな野郎とふたりきりなんて真っ平御免なあたしは、成瀬京也に背を向けてバスケットボールの数を数える。
「ねえ、りん」
成瀬京也がそこから一歩も動かず、あたしの背中に話し掛けた。
「んー?」
「昨日、何回イったの?」
「………え、…?」
あれ、今、あたしのことなんて呼んだ…?
何も考えず返事をしてしまったが、いやまさか…。
後頭部を鈍器でガツンと殴られたような気分で、視界がぐらりと揺れる。
「な、なんの話?誰の話?あたし、生田沙良だよ」
もう誰と間違えてるのー!とおどけて見せたのに、成瀬京也は目の奥を鈍く光らせ、口角を上げるばかり。じりじりとあたしに近付くから、あたしもじりじりと後退した。
だけど、ここは器具室。色んなものがごちゃごちゃと押し込まれた狭い部屋は、逃げ場なんかほとんどない。あっという間に8段の跳び箱が背中に当たり、冷や汗すら流れるスペースもない。
「生田沙良…ううん、りん、だろ。なあ、これに覚えは?」
「ひっ…!?」
成瀬京也がポケットから取り出したもの。
それは、昨日あたしが信じられない所に塗ったくった歯磨き粉だった。