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SMを詰め込んだ短編集
第18章 好きをどれだけ/SM
掠れた酷い声で必死に訴えた。訳も分からず涙がぼろぼろ零れて喉がつっかえて、嗚咽に塗れた酷い声だった。
多分、一番怖かったのは、先生が私から離れてしまう事だった。浮気なんか考えたこともないのに濡れ衣着せられて、先生が私のことを嫌ってしまうことが一番怖かった。
「先生すき、蓮さん、一番すき、蓮さんしかいらない、ちゅうして、ぎゅーってして、蓮さん離れちゃいや、ねぇ好きなの、蓮さん」
四肢を拘束されたベッドの上で、馬鹿みたいに泣いた。駄々っ子みたいに嗚咽と声が綯交ぜになった酷い声で泣き叫んだ。
先生は、くつくつ笑ってた。
「わかった。リン、もう泣かないで。僕もリンが一番好きだよ」
右腕が解放された。手首が擦れてひりひりする。続いて左手も自由になった。こっちは関節が軋んだ。
「蓮さんっ蓮さぁぁんっ」
「わかったわかった。ちょっと待って」
笑いながら私の足首の拘束を解く。自分の体じゃないみたいに軋んで重たい体を無理矢理起こして、まだジップアップパーカーのファスナーすら下ろしていない先生の大きな体にしがみつく。先生はやっぱり笑ってた。
「れん゛っ…さんっ…」
細身に見えて案外がっちりしている先生の体。パーカーの生地の感触。先生の匂い。先生の高い体温。先生の、
「おいで」
広げられた長い腕。広い胸。置いてけぼりになった子猫が親を見つけた時みたいに、泣きながら飛びついた。ぎゅーってされる温度と力加減と、先生のにおいに私の全部が包まれる。
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