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SMを詰め込んだ短編集
第6章 日進月歩の調教日記/ペット
残業を終えて家に帰る。わざとゆっくり歩いていたから時刻は20時を過ぎていた。

「ただいま、鈴」
「あっ…んん、おか…り、なさ…!」

ソファの上に苦しそうに蹲り、息を荒げる俺の彼女。一緒に暮らし始めてからずっと幸せな毎日だ。
鈴は会社では先輩。いつもにこやかで時に厳しいことばを掛け、とてもしっかり仕事をこなして上からも下からも信頼が厚い。
だけど俺の前では。

「遅くなってごめんね。良い子にしてた?」
「も、無理…蓮くんっ…」

先に帰宅したはずの鈴は、着替えもしないで帰宅後ソファで蹲っていたのだろう。スーツのスカートをぎゅっと握って涙目で俺を見上げる。その視線にぞわりと鳥肌が立った。
蹲って中途半端な快楽に喘ぐ鈴の細い首に真っ赤な首輪を掛けてやる。鎖のリードがじゃらりと音を立てると、完璧な雌犬になった鈴は纏っていた服を自ら全て脱ぎ捨てた。うん。なかなか上手く調教できている。
四つ這いになって見上げる目は、ご褒美を欲しがっていた。けれど。

「その前にごはんにしよう。鈴もおなかすいたでしょ?」

鈴の瞳が絶望に揺れる。鈴に背を向けた俺はこっそりほくそ笑んだ。ああ、たまらない。
だって鈴がいけないんだ。

昼休み、俺は同僚と昼食を取りに外へ出ていた。それから社に戻って鈴の姿を見つけたので嬉しくなって声をかけようと思ったんだ。
ところが鈴はいつもよりずっと高いテンションで誰かと話していた。
俺の知らない男だった。
角に隠れてこっそり聞き耳を立てる。遠い地の支社へ行ってる同僚か、もしくは親しい上司ということは分かった。あの時ああだったんだよね、懐かしい。そういえばあの後どうなったの?など。俺には全く分からない話だった。当然と言えば当然だ。俺は支社からこの本社へやってきたのがそんなに昔ではないから、元々本社にいた鈴は俺の知らない人とたくさん関わって来たのだろう。頭では分かっているが、しかし許せなかった。俺の知らない鈴を、あいつは知っている。あんなに無防備に肩を触られ、頭を触られて嬉しそうにしている鈴にも腸が煮えくり返る思いだ。
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