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SMを詰め込んだ短編集
第8章 僕のカナリヤ/SM
僕が10歳にまだ満たなかったと思う。僕の姉だという人が家に来た。差し障りなく世継ぎを育てるため、女であった姉は遠くの親戚に預けられていたのだとか。
世は男が絶対主義。親戚に何があったのかは知らないし聞かなかったが、これまで離れて暮らしていた姉と僕らの間には深い溝があったのは確かだった。父も母も疎ましく思っていたのだろう、姉は離でひとり静かに暮らした。姉のほうも食事以外に母屋への出入りは禁止されていたし、僕も姉と必要以上の接触は禁じられたが、こっそり姉に会いに行くのが僕の一番の楽しみだった。5年間、僕は毎日姉に会いに行った。
「姉さん、ただいま」
柔らかそうな髪。日に当たったことのなどなさそうな真っ白い肌。穏やかな笑み。細身の体に臙脂色の着物が良く似合う。
「おかえりなさい、蓮さん。そんなに走っては転んでしまいますよ」
くすくす笑う姉のなんと美しいこと。僕より2つしか離れていないのに、細い指を口元に当てる仕草がとても大人びて見えた。
言動、仕草、よく通る声。逐一僕の心臓がどくどくと脈打って、だけど僕だって姉に釣り合いたいと無理に大人ぶった。
「転ばないよ。子どもじゃないんだし」
「それは失礼を。…それと、あまりこちらにいらしては叱られてしまいますよ」
儚く笑う姉を──鈴を愛していると自覚したのは姉の見合い話が浮上した時だった。
体裁のためか親戚になにかあったのか僕には分からないが、10年近く離れて暮らしていた姉のことを父も母も疎ましく思っていたようだった。だからさっさといい所の嫁に──
「叱られたって構わない。僕は姉さんに会いたくて来たんだから」
か細い姉の指に、学校から走って帰ってきた僕の温い手を絡める。異性交遊?そんなもの、なんと思われたっていい。姉のこのか細い冷えた指を僕が温めてやりたい。
見合い?冗談じゃない。僕の姉を──鈴を、誰にやるもんか。
「あったかい?」
顔を真っ赤に染めて、恥ずかしそうに頷く鈴に僕の心臓だって破裂しそうだ。こんなにも人を愛せるのかと思うほど、僕は鈴を愛してる。
世は男が絶対主義。親戚に何があったのかは知らないし聞かなかったが、これまで離れて暮らしていた姉と僕らの間には深い溝があったのは確かだった。父も母も疎ましく思っていたのだろう、姉は離でひとり静かに暮らした。姉のほうも食事以外に母屋への出入りは禁止されていたし、僕も姉と必要以上の接触は禁じられたが、こっそり姉に会いに行くのが僕の一番の楽しみだった。5年間、僕は毎日姉に会いに行った。
「姉さん、ただいま」
柔らかそうな髪。日に当たったことのなどなさそうな真っ白い肌。穏やかな笑み。細身の体に臙脂色の着物が良く似合う。
「おかえりなさい、蓮さん。そんなに走っては転んでしまいますよ」
くすくす笑う姉のなんと美しいこと。僕より2つしか離れていないのに、細い指を口元に当てる仕草がとても大人びて見えた。
言動、仕草、よく通る声。逐一僕の心臓がどくどくと脈打って、だけど僕だって姉に釣り合いたいと無理に大人ぶった。
「転ばないよ。子どもじゃないんだし」
「それは失礼を。…それと、あまりこちらにいらしては叱られてしまいますよ」
儚く笑う姉を──鈴を愛していると自覚したのは姉の見合い話が浮上した時だった。
体裁のためか親戚になにかあったのか僕には分からないが、10年近く離れて暮らしていた姉のことを父も母も疎ましく思っていたようだった。だからさっさといい所の嫁に──
「叱られたって構わない。僕は姉さんに会いたくて来たんだから」
か細い姉の指に、学校から走って帰ってきた僕の温い手を絡める。異性交遊?そんなもの、なんと思われたっていい。姉のこのか細い冷えた指を僕が温めてやりたい。
見合い?冗談じゃない。僕の姉を──鈴を、誰にやるもんか。
「あったかい?」
顔を真っ赤に染めて、恥ずかしそうに頷く鈴に僕の心臓だって破裂しそうだ。こんなにも人を愛せるのかと思うほど、僕は鈴を愛してる。