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愛おしいキミに極甘な林檎を
第55章 届かぬ愛の裏切り



「あっ、ありがとう…ございます……」


守ってくれるとしても距離が近い。


あと一歩という一歩さえないくらい近くて、もう少しで触れてしまいそうだった。


下げている腕を動かしたらぶつかってしまうから棒立ちをしているしかない。


課長の温もりは忘れかけているし、職場ではこんなに近づくことはなかったからなんだか緊張してしまう。



目を合わせるのでさえ躊躇して視線を下に向けてしまうのに、どうしてなのか額と脇に変な汗が滲んでくる。


でもこの汗はヒヤリとするものではなくて熱い方だった。


「乙羽、……連休は楽しかったか?」


「えっ……、あっ、はい。そういえば課長に言っていませんでしたね。
ネット上での騒ぎも落ち着いたので会社帰り以外は彼氏といれるようになったんですよ」



「やはりそうだったか……。SNSを見ていたら乙羽と塑羅緒くんのことを助けてくれるような書き込みがあったから出掛ける誘いがなくなったんだと思っていた。……良かったな」


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