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愛おしいキミに極甘な林檎を
第55章 届かぬ愛の裏切り



雪で真っ白くなっている足元を見つめていた視線をゆっくりと上げると、課長が私の頬へと手を伸ばしてくる。


触れられてはいけない気がして警戒するように体を少し引くとその手はピタリと止まって下りた。



「……やはり今、言うのはやめる。そろそろ塑羅緒くんの上司がいなくなったか見てみるな」


そう言ってから課長は私に背を向けた。


どんな表情をしているのか見る勇気がなかったけれど、どこか切なそうな声をしていた。



「見当たらないから行ったようだ。あの人が帰ってきているということは塑羅緒くんも仕事が終わったのか?」


「いいえ。今日は残業があるから少し遅くなるって言ってました」


「いつも大変だな。乙羽は仕事が忙しい彼氏を持って寂しくないのか?」


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