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愛おしいキミに極甘な林檎を
第56章 あなたを愛しているから……

首を傾げられてもまだ伝えきれない私は火ノ浦さんの前まで距離を縮めた。
しっかり伝えられるように、涙も恐怖もぐっと堪える。
それからストッキングを穿いている脚を揃えてから畳んで座り、両手を地面につけて深く頭を下げた。
「お願いします。彼氏のことを社長の孫じゃなくて一人の人間として見てください。
新くんの知り合いではなく上司として彼のことを見て欲しいんです。
右手のリハビリも続けていて普通に暮らせていますから、仕事だって十分にやれているはずです。だから、……お願いします」
雪が解けて濡れている道路の上は、触れた瞬間に体温を奪うほどとても冷たかった。
会社帰りに解いた長い髪の毛も地面に触れていて塵と水気がついてしまっている。
でもそんなことよりも、ソラ先輩が傷つく方がずっと嫌だ。
そのためなら私がどんな恥をかいてもいい。
体を汚すことは嫌だけど、憎んでもいい人に頭を下げてもいとわない。
「乙羽……」
「参ったなぁ。若い女の子に土下座をさせる趣味はないんだけど……」
「お願いします……!」

