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愛おしいキミに極甘な林檎を
第56章 あなたを愛しているから……



指先がすっかり冷え切ってきてしばらく静かになった後に深い溜息が聞こえた。


見えないけれど、それは課長のものではないことが分かった。



「課長さんも言うことを聞かない部下を持って大変だねぇ。同情してしまうよ」


「…………」


「女の子にここまで必死に頼まれるのに弱いんだよなぁ……。お嬢さん、帰るから頭を上げな。

……雪原の味方だけど、大空くんのことはよく考えてみるからさぁ。

まっ、転勤するからいつまでもこうしていられないけど」



すぐそこに見える足が向きを変えて離れていく。


顔を上げた時には、火ノ浦さんの後ろ姿は声が届かないほど遠くに見えた。


冷たい地面から立ち上がると手だけでなく、足先もひんやりとしていたけれど、少しでもソラ先輩のためになれた気がして胸がすっとしていた。



「もうあの人に関わらなくていいのに、どうしてあそこまでしたんだ?」


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