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愛おしいキミに極甘な林檎を
第60章 夢見ていたシアワセの未来



挑発されても動じずに逃げる。きっと塑羅緒さんは私にそうしてもらいたいはずだ。


自宅に帰れないのなら人が多い場所まで走るだけ。


そのことに気づかれないようにゆっくりと後退りをして新くんから離れようとすると、急に背後に誰かの気配を感じた。




「この前の恨み……!」


「っ……――――」


女の声が聞こえてからすぐにドンッと強い衝撃を後頭部に感じて、一気に目の前が真っ暗になった。


その後、はっきりとは分からないけど固くて冷たい床に顔が強く打ちつけられた気がした。


目を開けたくても強い倦怠感に抗うことはできなくて意識が遠のいていく。



塑羅緒さん……。早く…あなたに……――――


愛している人の顔を思い出す力も薄れていき、まるで眠ったかのようにすぅっと暗闇へと落ちていく。



これはあの時と似ている。


八年前のあの出来事と……――――


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