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愛おしいキミに極甘な林檎を
第63章 愛おしいキミに……

一本の大きな木がひとつの世界だとしたら、一本の枝が折れても何事もなかったかのように明日へ進んでいく。
木が倒れて朽ちるまで時の流れは止まることはない。
そう。誰かがいなくなっても、時の流れは止まらなくて変わらずに進み続ける。
新しい明日に向かって……――――
「課長、寂しい顔してません?」
仕事中、キーボードを打つ手を止めてパソコンのディスプレイをじっと眺めていた郁哉さんに潮崎さんが声を掛ける。
すぐ側に立って話し掛けていたというのに郁哉さんは気づかないでいた。
「あっ、すまない。完全にボーっとしていた。なんだ?」
「頼まれてた書類できましたよーって三回くらい言っていたんですけど。残業続きで疲れてるんですか?
……いや、これは違うな。風子のことですよねー?」

