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愛おしいキミに極甘な林檎を
第63章 愛おしいキミに……



「僕というよりも誰にでも踏み込ませない壁を作っていて風子さん以外には本心を見せないんだと思います。

だからこそ、つらいことをなんでも一人で抱えてしまっていそうで怖いんですけどね。

塑羅緒さんの気持ちが落ち着いたら静かな場所で飲みながら将棋でもやりたいんですが……」


二人が酒を飲みながら静かに話していると店の入り口のドアがガチャリと開いた。


視線を落としていた那砂さんと理人さんは、誰が来たのかとそちらの方へ顔を向ける。



「どうも。仕事が終わったんで来ました」


次に来店した客は胸の辺りに黒いオイルの汚れが掠れている作業服を着ている男性だった。


その顔を見て誰なのか分かった時、ドアが開いた時に少しばかり緊張が走った理人さんの表情が穏やかになる。


「颯太くん……。いらっしゃい……」


元気がない那砂さんの姿を見て颯太さんの足の動きがピタリと止まった。



「あれ……!?なんかいつもよりすげえ暗いんじゃないですか?

二人で共通の友達の送別会か葬式にでも参列してきたとか……?」


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