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愛おしいキミに極甘な林檎を
第28章 結婚と彼女

祖父と郁哉さんの話し合いが終わってから呼ばれて和室に行くと、ずっと探していた婚姻届がテーブルの上に置かれていた。
先程まで何を話していたのか分からないけど二人の表情は穏やかだった。
「風子よ、印鑑は持ってきたか?」
「持ってきました」
祖父の隣に座ると向かい側に座っている郁哉さんと目が合った。
会社で顔を合わせた時のように私を温かく見守ってくれている視線。
でもそこには寂寥感が隠れている気がした。
「では、ここに押してくれ」
テーブルの真ん中に置いてあった婚姻届を祖父に渡されると、会社で見たことのある郁哉さんの手書きの文字で空欄だった場所が埋められていた。
大きくて右上がりな男らしい文字。
空欄になっているのは私が押印する部分だけだった。
完成する直前の婚姻届をいざ目にすると結婚の重さを感じる。

